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「しっかり噛んでよく食べる」 健康長寿センテナリアンと歯・口腔の健康について

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皆さんは「8020(ハチマルニイマル)運動」をご存知ですか?厚生労働省では、1988年からはじまった「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を推進中で、8020運動は、1989年より厚生省(現・厚生労働省)と 日本歯科医師会が推奨している歯と全身の健康を守るための運動のことです。20本以上の歯があれば何でもおいしく食べられ、満足な食生活を送ることができると言われていることから、80歳になっても20本以上の歯を保つことが目標とされています。開始当時は、80歳で20本以上の歯が残っている人は8%程度でしたが、30年後の2016年には50%を越えたことが発表されました。しかし、歯科先進国スウェーデンの達成率は80%と言われているので、予防歯科の意識の差はまだ大きいと言えます。

歯を失う最も多い原因は「歯周病」

 歯を失う原因は、主にむし歯と歯周病の2つで、特に50歳頃からは歯周病による歯の喪失が一気に増えると言われています。歯周病とは、歯槽骨(歯を支える骨)や歯根膜(歯と歯槽骨をつなぐ結合線維)が破壊される病気を言います。強い噛み合わせや入れ歯が合わないために起こることもありますが、原因のほとんどは、プラーク(歯垢)の中の細菌です。

プラークは歯牙細菌苔ともいい、生きた最近が歯の表面に苔のように密生することからこのように言われています。わずか1mgのプラークの中には、実に億単位もの細菌が生息していると言われます。このプラークの中に栄養や水など、十分な環境が整えば、悪玉細菌である歯周病菌が産生する毒のプラークが唾液や血液の無機質成分を吸って固まっていくのです。これを歯石といい、一度歯石となったものは強固に沈着するため除去が困難となります。

プラークや歯石は歯のつけ根や歯と歯の間にたまりやすく、歯肉が炎症を起こすと赤く腫れていきます。痛みなどの自覚症状が少ないために気づかないうちに進行してしまいます。やがて歯槽骨や歯根膜が破壊されて歯と歯肉の間に歯周ポケットと呼ばれる隙間ができます。プラークや歯石が一層たまるという悪循環を繰り返し、症状はさらに悪化し、痛みを伴う腫れや出血、歯のぐらつきが起こり始めてようやく歯周病に気づくというケースが多く見られます。

中でも、出血は歯肉に攻撃を仕掛けて身体の中に侵入しようとする歯周病菌と菌をやっつけて侵入を抑えようと攻撃する白血球による炎症の証です。炎症をそのままにしておくと、どんどんと歯周組織を破壊していき炎症は繰り返され、治療が手遅れとなると最終的には歯を失うことになります。

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 歯周病によって引き起こされる全身の病気

近年では、歯周病は口腔内だけのトラブルに限らず全身への影響が知られています。歯周病による炎症によって出てくる毒性物質は、歯肉の血管から全身に入り、様々な病気を引き起こす原因や、悪化させる原因となります。歯周病が引き起こす全身疾患として主なものは、次の通りです。

心筋梗塞、心内膜炎
糖尿病
脳梗塞
誤嚥性肺炎
早産・低体重児出産
バージャー病
骨粗鬆症など

特に、糖尿病や心臓病は歯周病との深い相関関係があると言われています。糖尿病をはじめとする生活習慣病によって全身の免疫力が低下していると、歯周病が進行しやすくなります。また、慢性的な歯周病となると、歯周病菌が血管内に入り込み、心臓に送られます。すると心筋梗塞や、心内膜炎、動脈硬化などのリスクが高まり、そのリスクは全身へと広がります。それ以外にも、口の中の細菌が肺に入り込み炎症を起こす誤飲性肺炎や嚥下性肺炎など引き起こすなど、歯周病を放っておくと、たんに歯が抜けるという問題では済まず、生死に関わる問題にまで発展する可能性があるのです。

 健康長寿センテナリアンを目指すために

現在、日本歯科医師会は、8020運動の次なるステップとして、「8020健康長寿社会」の実現を目指しています。 それは、歯周病等の重症化を防ぎ、8020達成者を増やし、健康長寿社会を目指すということです。また、健康長寿を目指すには「しっかり歩いて、しっかり噛んでよく食べる」という視点が大切であり、口内のトラブルをただの老化と見過ごすことなく、口腔領域における機能低下を見過ごさないことが重要という考えから「オーラルフレイル」という新しい予防の概念が示されました。また、厚生労働省も、市町村が行う歯周疾患検診に対して、健康増進事業により財政支援を行なっているほか、都道府県等が行う歯科健診や歯科疾患の予防に関する取組に対し、財政支援が行われるなどしています。

健康長寿センテナリアンにとって、食事は豊かな日々の暮らしにとても重要な役割を果たしています。いつまでも自分の歯で、自分の口から食事をとるためには、毎日の生活の中で虫歯や歯周病の原因となるプラークを確実に取り除くプラークコントロールを習慣化することが非常に大切となります。是非健康長寿センテナリアンを目指して、歯の健康やについても知識を広げてみてはいかがでしょうか。

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